第1部 SIM TOWN【井角町】解説


(3)【井角町】の授業展開

 次に、【井角町】による授業の基本的な展開の概要を紹介します。シナリオ1、「総合リゾート開発計画」の指導展開(A案)を例にすると、以下のようになります。

1)井角町(地域・場)の紹介

 井角町の現状を学習者に説明して、その地域のイメージ化を図る(この段階では役割は与えていない)。

2)井角町の課題と討論

 各地に同じような観光地ができたために伸び悩んでいる井角町、しかも若者が都会に流出している様子を提示する。次に、これらの状況への対策を考えさせる。この時、学習者は自分の立場からいろいろと対策を述べ、討論する。

3)「総合リゾート開発計画」の発表と討論

 「実は、この井角町に総合リゾート開発計画がある」と、教師はその計画の概要を学習者に知らせる。学習者に計画の是非を議論させた上で、彼/彼女らに役割を与える。今度は、井角町の町民や関係者としてさまざまな立場、さまざまな価値をもつ人物となった学習者が、役割演技によりその計画に対して意見を述べ、討論となる。討論では修正案、代替案の提出なども試みられ共通意見の形成が志向される(先の討論と同様、自分の意見を根拠づけるデータや相手を納得させる工夫が必要になる)。

4)意思決定

 討論の結果各々が役割の中でその計画に対する最終的な意思決定を行う。井角町としての意思決定もなされる。

5)自分の立場で「総合リゾート開発計画」を考える

 学習者は、役割を離れ自分の立場に戻ってもう一度「総合リゾート開発計画」を考える。評価票への記入を行い、意見や感想等を書く。役割演技による討論を通して、知識の獲得、価値の明確化及び変容の中で自己形成がなされるものと期待できる。

6)授業記録(指導・学習過程の記録)・評価

 指導者は、できるだけ授業の全過程を記録しておく(ビデオ、学習プリント、アンケートなどによる記録)。これを基にして、指導者自身や学習者の活動を評価する。また、学習者による相互評価、教材や指導の評価なども行わせて指導や学習に対する自省作用を持たせる(フィードバック、フィードフォワード)。




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