役割体験学習論の構想

社会科における

役割体験学習論の構想

 

 秋田大学

  井門 正美  著
  (著者ホームページへ)

日本学術振興会平成13年度科学研究費助成出版
A5判 440ページ 上製箱入
定価 11000円+税

ISBN4-921102-05-8 C3037

目  次

緒言―発刊にあたって―

序章 研究の目的と方法育

  第1節 問題の所在と研究の目的 1.問題の所在  2.社会科教育の課題と本研究の目的
  第2節 研究の方法と論文の構成 1.研究の方法    2.論文の構成と各章の概要 

第1章 社会科における役割体験学習の必要性

  第1節 状況的学習論の批判的検討 1.状況的学習論及び正統的周辺参加からの問題提起
2.状況的学習論(正統的周辺参加)の意義と問題点
3.学校教育における状況的学習論の方向性
  第2節 社会科における体験的学習の批判的検討 1.実践事例にみる体験的学習の意義
2.体験的学習の問題点
3.体験的学習の分類と整理
4.意図的教授としての体験的学習の必要性
  第3節 「役割」による体験的学習の再組織化 1.「役割」から捉えた状況的学習論と体験的学習
2.「役割」概念の意義

第2章 社会科における役割体験学習論

 第1節 先行研究・実践としてのロールプレイング
  (役割演技法)の検討
1.J.L.モレノにおけるロールプレイング
2.F.R.シャフテル,G.シャフテルにおけるロールプレイング
3.「役割体験」によるロールプレイング再組織化の必要性
 第2節 役割体験学習の構想 1.役割体験学習における役割理論
2.役割体験学習における統合論的アプロー
3.役割体験学習の教授・学習論

第3章 授業実践報告にみる役割体験

 第1節 役割体験の4類型に基づく実践事例の考察 1.第1類型(主体「現実」・場「現実」型)の実践事例 〜岡部博保実践〜
2.第2類型(主体「現実」・場「仮想」型)の実践事例 〜ジェーン・エリオット実践〜
3.第3類型(主体「仮想」・場「現実」型)の実践事例 〜宇田川嘉一実践〜
4.第4類型(主体「仮想」・場「仮想」型)の実践事例 〜西川満実践〜
 第2節 村野光則実践における問題追究過程と役割体験1.村野実践の背景と実践の展開
2.役割体験に基づく村野実践の考察
 第3節 実践事例から読み取る役割体験の意義1.類型別にみる役割体験の意義
2.役割体験学習の意義

第4章 役割体験学習の実践「SIM TOWN【井角町】」の開発と実践

 第1節 役割体験学習のための教材「SIM TOWN【井角町】」の設計 1.役割体験による「開発問題」授業化の必要性
2.【井角町】の教材設計
 第2節 【井角町】における討論の構造と評価方法1.【井角町】における討論分析方法の必要性
2.坂原茂の日常言語理論
3.日常的推論分析法
 第3節 授業実践の分析とその考察1.群馬県藤岡市立北中学校における実践
2.授業実践の分析と考察
 第4節 授業実践のまとめと評価1.群馬県藤岡市立北中学校における実践
2.学習者及び参観者による【井角町】の評価
 第5節 SIM TOWN【井角町】の再構成1.【井角町】に参加した教師(教育関係者)からのフィードバック
2.【井角町】の実践者からのフィードバック
3.筆者による【井角町】の再構成

終章 研究の成果と今後の課題

 第1節 研究のまとめと成果 1.研究のまとめ   2.研究の成果
 第2節 今後の課題と展望1.課題と展望  2.結び

主要参考文献

 

 資  料 

 

本書で提案する「役割体験学習論」は,社会科教育学研究の立場から執筆しているが,そのねらいは今日の学校や学校教育の変革にあり,いわば学校教育再生論なのである。序章で記しているように,本研究は,学校の営為や学校文化というもの自体を問い正しながら,そこで実践される教科としての社会科教育はどうあるべきなのかを実証的に検討した。こうした問題解決のためには,社会科教育学研究という限られた研究領域に安住することなく,学際的な視点から多くの研究分野の知見を得なければならない。それゆえ,研究内容は,社会学(学校文化論や役割理論),認知科学(状況的学習論),心理学・社会心理学(心理劇・社会劇),言語学(日常的推論分析法)等,多くの分野に及んでいる。場合によっては,専門分野の研究やその動向に対して異論を唱えている箇所もあるが,是非とも各分野の方々からのご批判とご教示をいただきたいところである。
 論文は,かつて群馬県の公立学校教師(小学校・中学校)であった私が,反省と問題意識を原動力にして,約9年にわたる研究をまとめたものである。その意味で本書は,学校の問題に未だ気付いていない教師,気付いてはいるが組織の日常としがらみの中で動きのとれない教師,あるいは果敢に変革を試みている教師等々,すべての教師に捧げるものである。本書が,多くの教師の目に触れ,学校変革の指針と手だてになることを願ってやまない。
 「緒言−発刊にあたって」より


編著者プロフィール

井門 正美

(いど まさみ)
 1955年群馬県に生まれる。早稲田大学社会科学部(1979年),立教大学社会学部(1982年)を卒業し,群馬県公立学校教員として沼田市立池田小学校,藤岡市立北中学校に勤務する。
1990年同職を辞し,上越教育大学大学院修士課程学校教育研究科に入学。
その後,筑波大学大学院博士課程教育学研究科を経て,現在,秋田大学教育文化学部助教授。博士(教育学)。
専攻は,学校教育学,社会科教育学,システム論。
主要著書に,『現代社会科教育論−21世紀を展望して−』(帝国書院 1994年)<分担執筆>
『問題解決力を培う  ロールプレイング・シミュレーション SIM TOWN【井角町】の授業』(NSK出版 1998年)
『国際化・情報化社会における心の教育』〔心の教育実践講座〕第10巻(日本図書センター 1999年)<分担執筆>
『21世紀の教育と子どもたち 第3巻 学びの新たな地平を求めて』(東京書籍 2000年)<分担執筆>などがある。

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